公開日:2018.6.5
世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」のひとつ、2つのアーチ門と城壁の曲線がひと際美しい、座喜味城跡(ざぎみぐすくあと/ざぎみじょうあと)を紹介します。座喜味城跡は沖縄南ICから車で約25分、読谷村の標高約120mの丘陵地にあります。
座喜味城跡には北と南に無料駐車場があります。今回は南駐車場に車を停めました。
南駐車場からすぐにあるのが世界遺産座喜味城跡ユンタンザミュージアム。2018年にリニューアルオープンしました。座喜味城についてはもちろん、読谷村の歴史について展示されています。
「史跡座喜味城跡」の石碑の横にある階段を上ります。
リュウキュウマツ並木の向こう側にうっすらと城壁が見えてきました。
アーチ門が見えてきます。遠目でも美しい。
15世紀はじめに護佐丸によって築城されました。その昔、沖縄は北山・中山・南山の3つの国に分かれていました。その時代に中山の武将であった護佐丸は今帰仁城で北山を倒すことに成功します。そして旧北山勢力の監視のため座喜味城の築城を命じられるのです。
三山が統一され琉球王国となると、その頃勢力が拡大しつつあった勝連城をけん制するため、護佐丸は座喜味城から中城城へ移ります。そして中城城で命を落とすこととなります。護佐丸が座喜味城に居城していたのは20年ほどだといわれています。
現代の発掘調査によると15~16世紀ごろの陶磁器が出土しており、護佐丸が座喜味城を離れた後も何かに使われていたと考えられています。
二の郭に入るアーチ門の横が拝所となっています。もともと城内に4ヶ所あった二御前、城内火神、城内アザナイシ御イベ、読谷山城内之殿の拝所がこの場所に移設されています。
座喜味城は1973~1985年の間、発掘調査と復元作業が行われました。
二の郭のアーチ門のアーチの頂上にあるのがくさび石。くさび石は他のグスクでは見られません。写真の二の郭のくさび石はおそらく当時の遺構です。また、沖縄で現存する最古のアーチ門ともいわれています。
天井の石は左右対称に美しいアーチを描いています。
二の郭側のくさび石も三角形。
波のように曲線を描く城壁にぐるりと囲まれる二の郭。左にあるのが入口のアーチ門、階段が付いている右手のアーチ門が一の郭へとつながります。正面にある空間へ行ってみましょう。
見上げるほどの城壁が両側にそびえ立ちます。もう少し奥へ。
2~4mほどの幅の道がまだまだ先に続きます。
ここで行き止まり。幅は広めですが急角度の下り坂。これはあらかじめ兵を潜ませ、迷い込んだ敵を攻撃するための武者隠しではないかといわれています。このようにトリッキーな防御施設と優れた築城技術から護佐丸は築城家としてその名を知られています。
武者隠しの石垣は加工していない石をそのまま積み上げた野面積み。
本土の場合ぐり石と呼ばれる小さな石が見えるのですが、沖縄のグスクはやはり中まで大きな石が入っています。それによって熱帯気候特有のスコールのような雨が降っても水はけがいいので石垣がくずれることはありません。
二の郭から一の郭へ向かう階段まで戻って来ました。
太平洋戦争中、一の郭は高射砲陣地として使われました。その際、この階段は埋められてしまいます。そして戦争が終わった後はアメリカ軍のレーダー基地として使われていました。その後1972年に沖縄が日本に返還されてから始まった発掘調査で階段が発見されました。
復元された一の郭のアーチ門はくさび石が四角形。内側も四角形でした。
一の郭に入って右手、まず目が行くのが巨大な礎石と建物跡。幅16.58m、奥行14.94m。発掘調査の結果、ここから瓦が出なかったため板葺きか茅葺きの建物だったといわれています。
気になるのが、建物を挟むように残される石垣。
何のためにあるのか、石垣だったのか、塀の基礎だったのかは不明。
作り方を見ると、後から取り付けられた雰囲気。
一の郭の左手。何やら石が立っています。
護佐丸の子孫、座喜味親方(ざぎみうぇーかた)が江戸幕府に参府し、無事に帰って来れたことを感謝し、拝所に灯篭を寄進したものが残されています。
なんと、一の郭は城壁に上ることができます。
想像していたより城壁がかなり分厚い。今は広くて歩きやすいこの石垣、当時この厚みの石垣を築くのは本当に大変だったと思います。
城壁は一周できるわけではなくて、一の郭の一部のみを歩くことができます。「いっちぇーならんどー」の看板が沖縄らしい。
主郭、一の郭を上から眺めてみました。上から見るとその広さがよくわかります。
緑がうっそうとしていてわかりにくいですが座喜味城の東側は谷になっています。白い建物の下の方はずいぶん標高が低くなっています。
これは二の郭の外側の城壁。眺望がよく、高台にあるのがよくわかります。
三角点とは国土地理院が定める緯度・経度・標高の基準点。山の頂上にあることが多いので城壁の上にあるのがとても不思議でした。
一の郭のアーチ門を上から見下ろすと、現代建築のダムによく似ています。もともと赤土のもろい地盤の上に建てられた座喜味城は城壁がカーブすることによって強固なものとなっているのだそう。また、同時に攻めてくる敵に対し容易に攻撃ができるのも特徴です。
芸術的な城壁のカーブの連続。城壁の上を歩くことで連郭式の美しい石垣をより一層楽しめます。
2つのアーチ門を1枚の写真に収められるのはこの場所だけ。
こんな撮り方もおすすめです。
さて、いったん外に出ました。座喜味城の周辺は公園として整備されています。
これは一の郭と二の郭のジョイント部分。こんもりと盛り上がった地面に合わせて城壁自体はとても低くなっています。座喜味城の城壁は3~13m。地面の凹凸に合わせて城壁の高さを変えることで城壁の上はほぼ水平になっています。
少し高い右側が一の郭、低い左手が二の郭の城壁。先ほどは右側の塀の上を歩いていました。
一の郭の東側を北に向かって遊歩道が続きます。
右手には何やら丸い建物が見えてきました。
展望台かな?
座喜味城跡公園が見渡せます。かなり広いことが分かったのでグスクへ。
公園内には屋根付きのベンチも。「城壁」の看板がめずらしい。たしかに城壁だけど通常は城跡なのでは?笑
せっかくなので、北側の城壁に沿って一周してみることに。
一の郭の北側。城壁の向こうは寄進灯篭があるあたり。
グスクには隅がない。本土の城のいかにきれいに隅を出すかという美的意識とは真逆なのがおもしろい。隅には悪い気が集まるという風水の考え方につながっているのでしょうか。
一の郭の西側に来ました。地面が下がっているので城壁の高さがぐんと上がります。
一の郭の城壁。座喜味城でおそらくここが一番の高さ。石垣の古い部分と新しい部分がわかりやすい。
ここが一の郭と二の郭のジョイント部分。わかりにくいので逆から撮影してみましょう。
高いほうが一の郭、低いほうが二の郭。ここがちょう武者隠しの裏側です。こうして見ると、武者隠しに迷い込んだ敵を一の郭の城壁から狙ったのではないかと想像できますね。
武者隠し沿いを歩いていると一の郭の城壁の先端がちらっと見える。
このカーブを超えると二の郭のアーチ門です。
ここの隅はわりと鋭角。
アーチ門が見えてきた。
これで一周完了。外周を歩くと石垣の高さやカーブの美しさがよく見えるのでおすすめです。さくっと中と城壁の上を歩くなら所要時間は30~45分。合わせて世界遺産座喜味城跡ユンタンザミュージアムを見学するなら1時間半くらい見ておきましょう。